謎の老人
それは私が3/29、3階の障害者病棟に移った時のことでした。
リハビリを終えて部屋に戻って来た時、部屋の入り口入ったところでその「謎の老人」とバッタリ出逢いました。
その老人は杖を突いて歩く小柄な老人で背広を着ていて私たちを優先させて後から隣のブロックへ入って行きました(その後何度も顔を見る機会がありましたが、眼光鋭く頭髪はオールバックにきめていました)。
良く分からないのが何故こんなパジャマ姿でない人が面会でもないし私と同じ病室へ入って行ったのか疑問が残ったままでした。
私の隣りのブロックでもあるし、関心があったので暫し観察することにした。
驚いたことにこの老人は自由に病院内を杖で歩き回っていることでした(普通は見守りが必要・・・でも後で分かったのは病院が問題なしと判断すればそれも必要ない・・・院内に限ってのことだが)。
いつだったか忘れましたが電話が掛かって来て(室内では発信はおろか受信も禁止)小さな声で電話していた(本人は禁止を知っているようで同部屋の3人にも聞こえるように10分が限度だからな、と言うように相手に言っていた・・・これは嘘も方便です)。
その時何の数字だか分らないけれど8%だと不味い、学会の要望で7%未満にしろと指示。
後日の電話で7.4%で決着した、と話していた・・・仕方がないのでそれで行こう、と決断したようだ。
本人の話によると県内でのメガソーラーを計画(函南、静岡、島田等と聞こえた)。
契約書は(謎の)老人の名前でするなと何度もダメ押ししていた。
このメガソーラーの完成が本人の最後の仕事のようだ。
退院控えてのある日驚いたことに見守りを付けて退院後入居するアパートの確認をしたり近くの家具屋にタクシーで出掛けてベッドを探したりとやることがハチャメチャ・・・常識では考えられない。
これは相当の人物で病院でも断り切れないモノだと知った次第。
本人はガンを患って退院後転倒してどこかを骨折したらしくここに入院してもう2年になると言う牢名主のような人物。
ガンの抗生剤投与で今でも指は冷たく血中酸素濃度が測れないとこぼしていた。
入院に当たって持ち込み禁止のモノが刃物(ハサミ・T字型の髭剃り(電気シェーバーはOK)、何故か耳かきもダメだそうで・・・私は4ヶ月以上耳かきが出来ない状態だったので退院後真っ先に耳かきをした・・・ビックリするほど大量の耳糞が出て来た・・・医者が言っていた耳糞は自然に落ちて来るのは嘘だ、と私は確信した。
耳かきをして耳糞が完全に蓋をしていて聞こえも悪かったのでこれで一安心。
話し戻してこの老人は退院後アパートに住むようだが住まいやモノには関心ないようで兎に角最後の仕事をやり遂げることだけが望みのようだ。
先の熱海の土石流事故を気にしているような話をしていたので何か関係あるのかな・・・。
その後、謎の老人は何事もなかったかの様に退院して行った。
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