宇宙になぜ、生命があるのか・・・戸谷友則著
↑の本、読了しました。
第一章
生命とは何か
つまり完璧な自己複製ではなく、「わずかに不完全な自己複製」こそが生命の本質というわけだ。
20世紀の生化学者であるオパーリンによる定義もまた、「自己複製と突然変異を起こすすべてのシステムは生きている」というものであった。
🔷それでも悩ましい「生命の定義」
結局の所、完璧な「生命の定義」は今のところ不可能であり、そしてもしかしたら未来永劫、不可能なのかもしれない。
🔷物理から見た生命--非平衡とエントロピー
「熱力学的」生命の定義である。
エントロピーとは「乱雑さ(秩序の反対)、「ランダムな度合い」の指標である。
エントロピーが最大となる(例:気体粒子が箱全体を満たす)ところで安定状態となる。
この安定した状態を物理学では「平衡」と呼んでいる。
第二章
化学反応システムとしての生命
🔷地球生命を形づくる物質
地球生命とは化学的な原子・分子の結合で出来た有機物質が、さまざまな化学反応でを起こすことで実現されている、「電気じかけの人形」である。
地球生命といっても、学術的に知られているだけでも130万を超すといわれる膨大な数の生物種が存在する。
🔷タンパク質~生命活動の主役
生命物質の大部分はタンパク質と呼ばれるもので、これはさまざまな種類のアミノ酸が多数つながって出来た高分子化合物である。
アミノ酸は、アミノ基とカルボキシ基と呼ばれる部分を持った有機化合物の総称で、自然界には500種類以上が知られている。
このアミノ基とカルボキシ基を直接くっつけたものが、もっとも単純なアミノ酸であるグリシンとなる。
さまざまなアミノ酸の中で、地球生命が使っているアミノ酸は20種類のみであり、これはすべての地球生命に共通している。
タンパク質はこの20種類のアミノ酸を多数結合させて、立体的で複雑な構造を持つようになったものである。
アミノ酸はあくまで1次元的に、つまり鎖状に連なって結合している。
実際に人体に使われているタンパク質の種類は10万を超えると言われる。
しかし生体内では、はるかに低い温度で有機物が「燃焼」し、エネルギーが生み出されている。
これを可能にさせているのがタンパク質からできた「酵素」である。
さまざまな酵素が触媒として働くことで、生命独特の化学反応が生み出されている。
🔷核酸∼遺伝情報の核心
生命の体を形づくり、その活動性の主役となるのがタンパク質なら、生命が持つ遺伝情報やそれに基づく自己複製の根幹をなすのがDNAやRNAと呼ばれる核酸である。
DNAは生命の設計図といわれるが、より具体的には、生体内で使われるタンパク質の設計図なのである。
地球生命はアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)、という5個の塩基を使っている。
このうち、A、C、Gは、DNAとRNAで共通して用いられるが、TはDNAだけで使われ、UはRNAのみで使われる。
つまり、DNAでもRNAでも4種の塩基を用いていることになる。
🔷膜に包まれた小宇宙
生命の最も生命らしい性質である自己複製と遺伝は、この核酸によって実現されている。
設計図である核酸と、それにもとづいて正確に製造されるタンパク質こそ、生命現象の本質をなす二大成分であり、細胞とは、それが膜に包まれた小宇宙であると理解してもよいだろう。
🔷水こそ命の源
生命体の中で最大の割合を占める物質はタンパク質ではなく、実は水である。
水の密度がいちばん高いのは4℃の水であり、それがいちばん、底にたまる。
もし、この広い宇宙に多種多様な生命があちこちで発生しているとしても、水を利用する生命はそのなかでも多数派であろう。
我々が地球外生命を探すときでも、まずは水の存在を基本に考えることは、理にかなっているといえよう。
🔷遺伝と発現のメカニズム
DNAは2本が対になってらせん状の構造をとっている。
有性生殖の生物の場合、染色体は父親と母親から1本ずつ受け継いだものがペアになっている。
つまり我々の体内の一つ一つの細胞の中には、父親由来と母親由来で、合計2人分の遺伝情報が含まれていることになる。
遺伝情報とはタンパク質の設計図に他ならない。
その遺伝子にもとづいて、ある性質が実際に生物に現れることを「発現」と呼ぶ。
🔷DNAの遺伝情報からタンパク質へ
このDNAとタンパク質の間の橋渡しをするのがRNAと、そしてリボソームと呼ばれる細胞小器官である。
このDNA→RNA→タンパク質という合成システムはすべての地球生命に共通しており、「セントラル・ドグマ」と呼ばれている。
生命科学的における最も根源的で崇高な教義といったところであろう。
第三章
多様な地球生命とその進化史
🔷宇宙における私たち人間の位置づけ
地球上には目もくらむほど多種多様な生物が生息している。
元をたどればたった1つの共通祖先である生命体から進化・分化してきたと考えられている。
🔷地球生命の分類
根源的な分類といえば、真核生物か原核生物か、という2つのグループへの分類であろう。
すべての生物種は例外なく、このどちらかに分類される。
🔷生命の進化系統樹
互いにまったく独立な起源を持つ無関係な生命種族の集合とも考えてしまいがちである。
これらすべての地球生命は全く同じDNAの遺伝子コードを使い、同じメカニズムでDNAからタンパク質を作り出している。
すべての地球生命はたった1つの共通の祖先細胞から進化してきたと考えられているのだ。
🔷さまざまな生物のゲノムの大きさ
進化の過程で高等生物が長いDNAを獲得するなかで、無断な部分も多く含まれるようになっているのであろう。
🔷生命の物理的な大きさとゲノム
原核生物の細胞の大きさがヒトの細胞より10倍ほど小さいことも、うなずけることである。
🔷その後の進化と多様化
地球大気の成層圏にまで達した酸素分子は、太陽からの紫外線と反応してオゾンをつくり、地表からの高度25キロメートル付近にオゾン層ができた。
このオゾン層が生物に有害な紫外線を効率よく遮蔽してくれるため、陸上でも生物が生存可能になったのである。
🔷地球の進化と生命
地球における生命は地球に対して受け身の「住人」ではなく、地球全体の物理状態を大きく変えるほどの力を持った、地球の重要な構成要素の一つであるということ。
最もよい例が、生物の光合成によって地球の大気が酸素を多く含むようなものに変えられてしまったという事実である。
第四章
宇宙における太陽と地球の誕生
🔷地球は宇宙でありふれた存在なのか?
月の存在によって地球の自転が安定しているということである。
地球の自転軸は23.4度だけ傾いていて、それが季節を生み出している。
これは月のおかげなのである。
地球のように大きな衛星を持たない他の惑星、例えば火星の自転軸の傾きは10万年ほどの間に約10度も変化する。
もし、地球に月がなかったら、大規模な気候変動が繰り返されたはずである。
第五章
原始生命誕生のシナリオーどこで、どうやって?
🔷原始生命をつくる最低必要条件~水と有機物
すなわち、生化学反応の必須の舞台である液体の水がある場所で、さらに生命の構成物質であるいわゆる有機物が存在していたはずである。
地球に海があるのはなぜ、有力な説は、小惑星や彗星からもたらされたというものである。
誕生直後の地球に降り注いで、水を供給したと考えられている。
いずれにせよ、原始生命に必要な水は地球誕生直後から豊富にあったと考えてよかろう。
🔷ミラー・ユーリーの実験
地球の原始大気において、雷をエネルギー源として有機物が生成され得ることを示している。・・・歴史的意義はやはり大きいというべきであろう。
第六章
宇宙に生命は生まれるのかー原始生命誕生の確率?
🔷人類間での進化と人間原理
「知的生命体が存在することが可能で、さらに実際に生まれている宇宙」にかぎられる。
このような概念を一般に人間原理と呼んでいる。
原始生命が誕生して、人類のような知的生命体に進化するまでに、約40億年かかっている。
太陽は誕生してから約100億年は安定して輝くことができるとされている。
地球に生命が存在できる期間は最大100億年ということになる。
この100億年のスパンのうち、最初の約5億年で生命が誕生し、その後40億年あまりで人類が出現したというのなら、生命の誕生はやはり早かったと言うことになろう。
わずか10億年ほど後には地球の環境は高温化して、生命は存在できなくなるという見積もりがある。
地球科学の知識にもとづけば、地球に生命が存在できるタイムスパンは地球誕生から100億年ではなく、55億年ほどにすぎないという可能性が高い。
つまり「最初も最後もギリギリ」ということになるのだ。
第七章
宇宙はどこまで広がっているか、そこに生命はいるか
🔷広大な宇宙を作るインフレーション宇宙論
インフレーションをビッグバン宇宙論の基盤の一つとして受け入れている状況になっている。
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とにかく難解な本でありました。
入院前に買っていた本の中の1冊ですが、なぜか妙に読みたくなって買った次第です。
以前の私はこの種の本とは無縁でしたが、加齢に伴って読みたくなったというのが本音です(理由は不明)。
タイトルが根源的・かつ魅了されるものだったからか。
読み終わっても凡人の頭では到底理解は出来ませんでしたが分からない、ということが分かって腑に落ちました(汗)。
入院前から生命・宇宙・地球の歴史等に関心が強くなって来たのもがむしゃらに生きて来た以前の自分を振り返って死を迎える歳になって行き着いたテーマだったのかも知れませんね。
なぜか分からないけれどもスッキリしました。
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