これは’09.8.26にアップしたモノの要約です。
この本は新しいオーディオの考え方と言う副題を付けられた「オーディオ100バカ」の続編である。’84初版 高城重躬著 (株)芸術現代社刊 ¥1,200.-です。
本当はもうちょっと色が濃いです。
尚、前著と合わせて100バカです。(それぞれ50バカずつの記事です)私は生憎前著は持っていません。
この方は知る人ぞ知るこの世界においては著名な人物でオーディオ評論家の草分けとも言える人です。
元々は数学の先生で後校長を最後に退官し、好きなオーディオが収入の糧になった幸せな方です。’99死去。87歳。
世に言う原音再生を唱える源流の人でもあります。ただこの場合の原音再生は彼の自宅で録音し、再生された音が同じと言う極めて狭義の考え方で巷で言われるものとは一線を画します。
これならそのように聴こえなければ駄目だと言っても不都合はないと思います。
巷の原音再生論は甚だ無意味な話で私は全く意に介しません。考えてもみて下さい、あれだけの機材・経路を経由して録音されたモノがどうしたら原音再生と言う発想に結び付くのか、全く分かりません。・・・この件はこの本の紹介に当たって本筋の話ではありませんのでこれで終わります。
質問も一切、お受け致しませんので悪しからず...。
この本はちょっとネットで調べて見ましたが、現在は入手は難しそうですね。
私は買った当時真面目に読んだことはないのですが、今改めて読むと私って本当にバカだなー、と思うことが一杯書いてあります(爆)。
今更気付いても後の祭りですが、私自身の考えを述べるより、先人の著したこの本で私自身も納得した部分を抜粋して紹介したいと思います。
1.(パイプ)オルガンから重低音だけを期待するバカ
この楽器は大小様々あり、時代により、国により音創りも違う。同じオルガンは二つとない。
日本のオルガンも年々増えてはいるものの、これと切り離せぬ関係にあるホールないしは教会を含めての響きとなると、未だゝヨーロッパの足元に及ばない。
その上、歴史的銘器となるとこれは絶望的。
この点からもオルガン音楽のレコードは貴重だ。
単に重低音だけを期待するのでは、演奏者はもとよりオルガンにとっても気の毒と言うほかない。
2.湿度、温度の影響を考えぬバカ
楽器の音が湿度によって変化することは良く知られている。
温度によっても音は変わる。
パイプオルガンのパイプを収納した部屋には人が一人入っても温度が変化し調律が狂うと言う理由で入室が許可されなかった。
同じようなことは他の楽器でも言える。
オーディオも同じ。
例としてカートリッジ、寒い日は当然、びり付き易くなる。
適正針圧は温度によって変わる。
湿度の影響で一番音質が変わるのはスピーカ。
それも紙を使ったコーン型である。
最近は防湿処理をしたりしているようだが、昔の製品は特にひどかったようです。
部屋の温度・湿度の管理は重要です。
特に日本の旧来の和室はもろに影響を受けるので要注意。
3.はびこる悪貨に気付かぬバカ
悪貨は良貨を駆逐する、とは良く言われたものです。
オーディオだけに限ったことではなく、楽器メーカーにしてもこの現象によって姿を消した良貨は枚挙に暇がない。
ポリシーの一貫。
これは長いスパンで見れば一目瞭然。
注目を集めたと見るや大手が参入し、又潮の流れを見てさっさと引き上げてしまう。
これの繰り返しでオーディオも混乱の極致を味わって来た。
私は、昔から大手メーカーのモノには余りちょっかいを出さず、専業メーカーのモノを求めて来たがこれとて言うは易く行うは難しであった。
4.音楽を目で見るバカ
スペクトラム・アナライザーのことです。
この本来の目的は周波数分析の為に開発されたものです。
音楽は飽く迄も耳で聴くもの、録音の良否もその音楽を念頭に置いた上でこれ又耳と頭で判断すべきだ。こんな装置は測定用に止めたい。
5.遮音と吸音を混同するバカ
遮音に一番良いのは部屋の仕切りの天井、床、壁などに重い材料を使うこと。遮音材には吸音効果はない。
コンクリート壁では音の反射がひどい。
理想は鉄筋コンクリートで外郭の骨格を形成し、内側に木造で部屋を作る2重構造・・・浮床仕様ではない。
空間は充分な容量を設けて音の逃げ場を確保する。
ライヴを目指すが、木造の部屋はどんなに強固に作ってもデッド方向に行くので柱の間隔等を狭めてカチンカチンの構造とする。
勿論上下・前後・左右は全て非平行とする。(ギザギザにする必要はない)・・・構造上のテクはサーロジックのHPを参照されたい。・・・これは私が目指す方向です。
6.読み物としての記事を真に受けるバカ
多くの場合、読む方はその記事をそのまま鵜呑みにしない方が良いことは言うまでもない。
例えば調整、ややドンシャリ気味のバランスを中音をそのままに低音や高音を下げるようにすれば当然、素直な音になる。でもこれで音楽が楽しめるか。
そう言う意味でこの種の記事は読み物として参考用くらいに受け止め、そのまま真に受けないことだ。
病気の療養と同じで一回で気分よくなったとて、それで全治したとは限らない。
7.耳を大切にしないバカ
60歳を過ぎたら1万Hz以上は聴こえない人が多い、殊に老人ホームなどでのんびり暮らす人は高域がガタ落ちとのことだった。
そうだとすると、耳は適当に使った方が良いらしい。
やかましい音を避けるのも手だ。
歳を取ればとりわけ高域が落ちるのは避け難いこと。
音楽を聴くとなると話は違い、こんな単純なものではなくなる。
大切なのは今鳴っている音に対する判断力ではなかろうか。
今鳴っている楽器が何であり、それがどう聴こえるか、バランスはどうか・・・と言ったこと。
いつも音に好奇心を持つこと、これが耳の劣化を防ぐことにもつながると思う。
神経を集中して、耳で聴くことをしないで、音の洪水にどっぷり浸ってばかりいたのでは、耳が鈍化しても致し方ない。
8.古楽器演奏を敬遠するバカ
オリジナル楽器による演奏とは制作された当時のままの状態で演奏することを意味する。
古楽器は現在、クラシックでは使われていない。
民族楽器も含めて、古い楽器と言うことにしておこう。
古楽器による演奏は、現代の楽器のように洗練されてはいないにしても、その素朴な音にはひきつけるものがあることは確かだ。
音の履歴書
昭和27年、家を新築するに当たり、最初から巨大な低音用ホーンを建築の一部とすることにした。
開口部を天井に持つこの低音ホーンの建設も、日本で最初のことだったかも知れない。
ホーンは全て自分で設計。数学が専門だからコンピューターがない時代でも訳なく出来た。
オーディオには数学と音楽が不可欠である。・・・高城重躬
この時、彼は高校の数学教師で趣味としてやっていた。
それにしても何とも凄い人がいたものだ。
ただ、残念なのは全て分っている人はいない、と言うことですね。
高城邸を(写真で)拝見すると兎に角モノが溢れ、足の踏み場もない。
これでは100バカと言って批判記事をものした人も尤も肝心なところで抜けていたと言わざるを得ません。
私から言わせると自戒を込めて「アンタが最高の大バカ」と言えそうです。
それにしても某サイトでアップされていましたが、生前故人が愛した機器類も主がいなくなれば正に粗大ゴミとなる運命のようです。
何年か経ってからでしょうが、愛用の機器類もヤフオクで売りに出されたようですね。
しかし、壁に埋め込んだゴトウユニットなどは手の付けようがない訳で残された者のことを考えれば、精々家毎のオーディオだけは避けた方が良さそうです(爆)。
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